2013年8月10日土曜日

飲食店の目標来客数のKPI設定と来客増加施策

「とりあえず、生!」が儲かる理由 飲食店の「不思議な算数」/江間 正和

飲食業の事業構造を理解する上でランチは儲からない 飲み放題は儲かる 飲食店の「不思議な算数」がとても良かったので、これも読んでみたけれど学び感は少し落ちた。ただ、むしろ飲食業に携わる人というより一般の人がどうやってよいお店を見つけるのか、という観点で読むとすごく勉強になるのではないか、と思った。

来店客数の見積もりをどう考え、その増加のためにどんな施策を打つのか、という点については前回の本よりもきちんと書いてあってよい洞察をもらえたので、そこの部分についてメモをしたいと思う。


目標来店客数を設定する意義は日々のオペレーションにおいて下記二つを把握することだ。

1. 現状行っている施策の正しさを知る事
2. 1. において施策が正しくないと分かった際に方針転換するための方向性を知る事(正しい事はそのまま続ける)

その意味で、KPIの設定は次のアクションが考えやすいものでなければならない。また、いきなり最終の目標来客数を追っても具体的にどんなアクションにすればいいか分かりにくいので、最終的な目標を個別の施策に落とす必要がある。著者は最終目標を1. 知り合い比率、2. 常連比率、3. 企画もの比率として分解したようだ。文脈として「紹介制」に移行するまでに必要な客数、と書いてあるのでおそらくこれは新規顧客ではなくて常時来てくれる人を想定している数字だろう。

<著者が行っている顧客のカテゴライズ事例>
1. 知り合い比率
最初の来店のきっかけがお店以外にある人たちの比率。例えば以前からの知り合いの来店や、お店の外で知り合った人の来店およびそのお連れの人たち。

2. 常連比率
最初の来店のきっかけがお店である人たち。一見さんで来店していただき、リピーターになっていただいたな、という時点でカウントする。

3. 企画もの比率
お店主導の企画の参加者の数。初回の来店のきっかけ作りをイベントとしてお店主導で実施して、定着した人の数。

上記3つを分子とし、お店がやっていける損益分岐点に該当するお客さん数を分母として設定するという。しかしこれ、データ把握の仕方が書いてない。お店が小規模でお客さんの顔を覚えられるうちは把握は可能かも知れないけれど、スケールしたら顧客の属性を把握するのが難しくなるだろう。

以上に加えて、個人的には新規顧客獲得のKPIとして下記二つも加えるとよいのではないかと思う。しかしこれも把握がむずかしいので、クーポンにして媒体別に申告してもらうような仕組みが必要になるだろう。

4.  お店のことを知ったきっかけが紙媒体である人の比率(媒体別)
5.  お店のことを知ったきっかけがネットである人の比率(媒体別)

で、例えば客単価が4000円で1ヶ月に500人の来店が必要なお店を例にすると、下記のような目標設定をそれぞれのカテゴリーに対してすることができる。

1. 知り合い    150人(30%)*4,000=   600,000円
2. 常連         250人(50%)*4,000=1,000,000円
3. 企画もの  100人(20%)*4,000=   400,000円
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   合計      500人(100%)         2,000,000円

<新規顧客獲得とリピーター獲得の施策は分けて考える>
日々業務をやっているといろんなアイディアがでてくるものだと思うが、新規顧客獲得とリピーター獲得の施策は分けて考えるべきだろう。その施策がどちらを狙っていて、自店舗にとってどちらが重要なのか、何に力を入れるべきなのかを考えることが必要だ。その上でそれぞれの施策は新規顧客、リピーターになる人の属性を考えながらどんな心理・思考回路でその施策を受け止めてもらえるのかを考える必要がある。
それぞれの施策について著者は下記を上げているが、書かれた時期にもよるのかソーシャルメディアの活用等の視点が抜けている、あるいは不足しているように思える。

1. 新規顧客を獲得する施策
・雑誌やネットで広告をうつ
・ウェブサイトを作る
・ウェブサイトをPRする
・街頭でチラシをまく
・新聞に折り込みチラシを入れる
・お店の入り口を目立たせる
・外のメニュー看板・内容を魅力的に見せる
・店内に入りやすいような装飾・仕掛けを作る

2. リピーター化する施策
・会計後に金券を配る
・会計後にポイントカードを作る
・顧客情報を集めてお礼状を書く
・DMを打つ
・メルマガを送る
・ウェブサイトのコミュニティ性を向上させる
・メニューに次に来たときに食べたくなるような仕掛けを施す
・イベントにお誘いする

飲食店のネット利用については、過剰な期待も禁物だがケースによっては効果的な場合もあるのでしっかり考えるべきだと思う。前稿飲食業などの従来型の産業とハイテク及びネット産業の本質的な違いは何かで書いたように、どうしても物理的な制約を持つ飲食業ではチェーン展開しているならともかく、ネットでそのお店のことを知ったからと言って、わざわざ遠くから来てくれる確率はあまり高くないかも知れない。仮に来てくれたとしてもリピーターになってくれる確率はさらに低いだろう。あるいは「キーワード+エリア」の検索は飲食ではどれくらい発生しているのだろう。ネット広告をみて来てくれるお客様よりも、たまたま通りかかってチラシを見てくれた人の方がリピーターになってくれる可能性は高い。また、チラシを近隣の方々の郵便受けに投函していく方法もおそらくネットよりも有効かもしれない。
ただ、ランチ狙いの場合など、ソーシャルメディアが有効な場合もあって、それは下記の条件を満たしているときだと考える。
・その人のソーシャルネットワーク上のつながりが同僚・同業者を多く含んでいる場合
・都市圏で人口密度が一定高い場合
例えば、誰かがランチをシェアしてくれると同僚が見ている可能性が高く、同僚だということは同じオフィスで働いている可能性が高いので物理的な制約の壁を超えてゆける。あるいは金融業などはたいていどこの都市でも近場に密集してあるので、同僚でなくても同業でも同じ事が言える。


これについてはカナダのKINTONというラーメン屋さんがFacebook上で面白い取り組みをしているので次回の記事で紹介しながらもう少し考えてみたい。
「とりあえず、生!」が儲かる理由 飲食店の「不思議な算数」/江間 正和

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