2014年3月23日日曜日

Google の評価制度- 評価される要素について

そろそろ関わってくれる人をどうやって評価、処遇するのかを考えないと行けないので、Business Insider にGoogleの評価制度の話を使って久しぶりの人事ネタ。
http://www.businessinsider.com/how-to-use-google-okr-employee-grading-system-2014-2#


記事によると、GoogleはIntelで使われているObjectives and Key Results(OKR)という制度をかなり初期の頃から活用しているという。

内容はいわゆる「目標管理制度」で、一口に目標管理制度と言っても会社によっていろいろな運用方法があるのでGoogleの例として取り上げてみたい。


Business Insider の記事の書き方だと、インテルで使われていたすごい制度をGoogleがまねした、というような書き方だけど別にすごい斬新なわけではなく、これは一般的には目標管理制度と呼ばれるものの一種にすぎない。

まず、評価制度にはどんなものがあるのだろうか。一般的には下記のようなものが存在する。

<評価制度の種類>
1. 職務遂行能力評価(職能評価制度)

従業員が与えられた職務を遂行し、パフォーマンスを上げるために必要となる能力(職務遂行能力[職能])を評価する制度
※昔の日本企業ではこれがとても多かった。90年代の「3つの過剰」の一つである
人件費削減のためにコンピテンシー評価に切り替えられた事も多々。

2. コンピテンシー評価

従業員のコンピテンシー(高業績者の職務上の思考・行動特性)の発揮度を評価する制度
※これだけで評価するのは難しい。また職能評価がより詳しくなっただけ、みたいな批判も見られる。

3. 職務・役割評価

従業員に求められる仕事や職務上の役割の達成度を評価する制度
※欧米の企業では極めて一般的。同一労働同一賃金とも大きく関係する。

4. 業績評価(MBO)

期初に従業員自らが設定した目標の達成度を評価する制度
※目標管理制度は日本企業の80%に導入されていると言われているが、運用がかなり適当で職能的に運用されてほとんど意味がない状態になっているケースもある。

5. 情意評価

従業員の仕事に対する姿勢や意欲を評価する制度
※これは最近ではあまり見られないのではないだろうか。。中小企業とかこれに近い評価が実際されているかもしれないが。

6. バリュー評価

組織独自の価値観や規範へのコミットメントの度合いを評価する制度
※これだけが評価の基準になっているケースは珍しく、業績評価が80%で、20%だけこの基準を用いるなど、他の基準との抱き合わせで使われることが多い


以上の中からGoogleは目標管理制度を導入しており、業績評価を行っているようだ。記事のスライドによるとこれを行う事のメリットは下記であるとしている。


1. 規律の思考をもたせるため(主な目標を明らかにする)

2. 正確なコミュニケーションを行うため(何が重要なのか全員にしらせる)
3. 達成度を計るための基準を設定するため(今どの時点にいるのかを見せる)
4. 集中度をあげるため(組織間でお互いに歩調を合わせて働く)

ちなみに裏をとるためにカリフォルニアのGoogleで働いていたエンジニアに、Googleの評価制度について聞いてみた。


彼によると、



確かにOKRSは使われていた。ただ、プロダクトに関するOKRSと個人のOKRSは別物だった。プロダクトに関するOKRSは「7日間のアクティブユーザーが100万人」とかで、個人のものは「○○(Googleの何らかのテクノロジー)について学び、有用なデータを分析してレポートを作成すること」などだったそうだ。また、個人のOKRSとプロダクトのOKRSで共通なのは、事前に本人が妥当な目標であることに同意していて、かつその目標は野心的ではあるけども現実的なもので、自分が担当すべき業務がすべて網羅されていた、とのこと。そしてそれぞれが四半期ごとに評価される。個人目標は、プロジェクトの完遂と個人あるいはチームの成長目標のミックスであったそうだ。


うん。やっぱり聞いてみてもそんな斬新なものではないかもしれない。似たような制度を用いている会社は日本にもある。では似たような目標管理制度を導入しているのに、業績の良い会社もあればそうでない会社もあるのはなぜだろう。おかれている産業、ビジネスモデルが大きく関係しているのは間違いない。そしてもう一つとても大事なことは「組織の執行能力」とでも言えるものだ。つまり、目標を達成するために、決めたことをいかに早く、クオリティ高く、執行する事が出来るか、という事だ。社員のモラルを高める、というような課題も究極はこれの一部だ。


この本に下記の記述がある。

ゼミナール経営学入門
まず、能力や成果の人事評価には、客観性や公平性はないと思い定めるべきであろう。人事評価には主観的な部分が残らざるをえないし、評価結果の公平ということもない。しかし、評価される側が評価結果を「のみ込め」なければならない。そのために、「納得性」をなんとかして作る工夫をする。
最近、成果主義の人事と関連して、目標管理システムを導入する企業が多い。きわめて面倒な仕組みなのだが、あえてそれを実行しようとする企業の真のねらいは、目標達成をベースとする成果評価の納得づくりにあるのだろう。目標管理のプロセス全体の中で自分の意見が反映できる機会があること、そしてこの面倒なプロセスに上司と人事部がエネルギーを割いているということ、この2点が納得性の原点のように思える。つまり、このシステムの本質は、決してインセンティブを高めるための管理の方法という点にだけあるのではなく、むしろ本人の意見上申を含んだ面倒なプロセスを経由することによって、成果評価について納得性を高めることにある。(P319)
これはものすごい現場感のある記述だ。伊丹先生の、アカデミックな世界にずっといながら企業社会で起きているいろんなモヤモヤを言語化する力には、いつも敬意を持たずにはいられないのだけれど、最近この件については違う意見を持つようになった。

評価制度は納得度のため、と言ってしまうことは経営者にはできない。経営者がそれを言った瞬間にシステムが崩壊してしまうからだ。そしてなにより、「立てた目標をやりきった人を評価する」「その時の目標設定はフェアである」という組織が大きくなるほど難しくなるこの取り組みを納得度のためだ、などとあきらめずに愚直にやり続けた企業が強いんじゃないか、と思うようになった。


前述のエンジニアに聞いてみて一番印象的だったのは、彼が「事前に本人が妥当な目標であることに同意していて、かつその目標は野心的ではあるけども現実的なもので、自分が担当すべき業務がすべて網羅されていた」とコメントしたことだった。私が日本で出会ったエンジニアの人たちは皆さんとても優秀だったけれど、上記のように目標管理制度の本質的な意味合いを理解して言葉として伝えることが出来る人はなかなかいなかった。聞いた彼がとても優秀であることは間違いないのであるが、これはもしかしたらGoogleのマネジメントのすごさなのかもしれないとも思う。


Googleの強さは、新卒で入ったエンジニアが業務遂行における目標を適切に理解し、また制度の仕組みとその意義を理解しながら、ゆえに納得度を持ちながら業務遂行出来るマネジメントが出来ていることなのかもしれない。


経営者の大きな仕事の一つは社員に働きやすい職場を提供することだと思う。かっこいいオフィスとか、アメニティが充実してるとか、無料のスナックがたくさんおいてあるとかいう事以上に業務遂行において目標を適切に理解し、目の前の業務に集中しながら働ける、というのは働きやすい職場の最も重要な側面だ。


Google先生は確かにすごい。けれどそのすごさは「イノベーションなんとか」とかが根本的な原因ではなくて、むしろ優れた組織運営力なんじゃないか、と思える今日この頃である。

0 件のコメント:

コメントを投稿