2013年6月18日火曜日

値付け(プライシング)における3つの合理的な方法論

ビジネスについてあなたが知っていることはすべて間違っている/アラステア・ドライバーグ

プライシングについては昨日の記事でそのパターンをご紹介したが、本書は経済学的な観点からその本質的な意味を説明してくれている。

著者は最も効率的なプライシングの要点は下記だとする。
すべての顧客を個別に扱い、提供されるものに対して彼らがどれだけの価値を見いだしているかを正確に知り、それぞれの顧客に請求する料金は他の顧客に知られないようにする。この理想にできるだけ近づける価格戦略を考案する(P56)
つまりはこれ、経済学でいう需供曲線の均衡点でプライシングしましょう、ということなのだが、現実社会でこれを正確に把握することは難しい。しかし逆に考えれば、全てのプライシング手法は上記を把握するためのコスト/デメリットとメリットとの間にあるはずだ。



もっとも効率的なプライシングは上記かも知れないが個別のトランザクションに対して個別のプライシングをする手間と、あるいは別々のプライシングをしていることが明らかになることによって顧客に与えてしまう影響(これは商材によって大きく変わる)によってその合理性には大きな差が出る。

ではその合理性を如何にコントロールするか、ということについて著者は3つの方法を提案する。

<プライシングにおける3つの合理的な方法論>
1. 顧客を個別に扱う
 コンサルタントやソフトウェアの設計者なら個別に均衡点を探すようなコミュニケーションを取ることは比較的容易だ。パーソナルトレーナーなどでも可能だと著者はいう。ただし、これが成り立つための条件もある。
ここで重要になるのは、顧客の数がかぎられていることと、カスタムメイドのサービスを考案するのにかかる時間に値するだけの十分な価値を生み出すことである。(P58)
2. 顧客を求める価値ごとにグループ分けする 
今度は1. のケースのように顧客を個別に扱うことができないのなら、求める価値ごとにグループ分けをすることを提案している。例えば、航空会社はビジネスクラスとエコノミークラスの料金設定を変えている(土曜の夜に宿泊したいかどうかで、ビジネス客とレジャー客をグループ分けしている)

3. 価格の選択肢を提示し、顧客に選んでもらう
さらに2.のように明確なグループ分けもできないときには、スターバックス流の分類を採用する。選択肢を3つ用意し、顧客に自分で選ばせるのである。

飲食業においては上記3つの方法の1.は行きつけの高級料理店で取られる「おまかせ」のコースで みることができる。店主はそのお客のことをよく理解しており、それまでの経緯で懐具合もわかっているので「おまかせ」されても妥当な値段で妥当な品質の料理を提供することができる。その顧客の「均衡点」がわかる店主はその客向けの食材が手に入った時には電話で知らせてくれたりもする。2. は居酒屋で設定されている「貸し切り」の値付けとそれ以外のものが当てはまる。3. はコース料理の値段がだいたい3段階になっており、多くの人が真ん中を選ぶことから真ん中が最も出るコースとなる。これは寓話にちなんで「ゴルディロックス」と呼ばれている。では、この3. のゴルディックス計画を取る際の値付けはどのように設計したらよいのだろうか。

<「3. 価格の選択肢」における妥当な価格を探す方法>
「3. 価格の選択肢」を提示する際には、その選択肢の真ん中のプライシングがマーケットの均衡点を捉えている必要がある。均衡点から離れている選択肢を提示してしまったら、選択肢を提示している意味がないからだ。ではどのように均衡点を探せば良いのだろう。
ゴルディロックス計画を実行に移したら、客がどの価格のものをどれだけの比率で買うかに注意を払わなければならない。多くの顧客が3つのうちのいちばん大きいものを選んでいたら、もうひとつ、もっと大きいサイズを加える。誰もがいちばん小さいものを選んでいたら、おそらくピラミッドの底辺の顧客を失っているということなので、さらに小さいサイズを加える。(P62)
<低価格戦略が成立する条件>
しかしそれでも低価格戦略を取りたい、という人は下記の成立条件を満たしながら前に進む必要がある。 
・会社が大きいこと、あるいは急速に大きく成長すること。
・何よりも安さに価値をおく企業文化を育てること。
・サービスや利便性、快適さに価値をおく顧客は無視すること。
・おそらく最も重要なこととして、価格だけを気にかける顧客が多い市場を見つけること。(低価格のためには他のことを犠牲にしてもいいと思っている顧客)(P52)

 ビジネスについてあなたが知っていることはすべて間違っている/アラステア・ドライバーグ

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