2014年7月20日日曜日

北米フードトレンド:ファーマーズマーケットという新しいトレンド

カナダに最初来たとき、なんだかファーマーズマーケット多いなー、と漠然と思っていた。日本で気づかなかったのは馬車馬のように働いたサラリーマン的生活のせいかと思っていたら、どうやら違ったらしい。

たとえば下記のリストによると
、トロントでは全部で32のファーマーズマーケットが開かれている。
http://www.torontoisawesome.com/lifestyle/community-culture/awesome-toronto-farmers-markets/

東京では、このサイトによると4つ程度しか存在してないようだ。

http://eftune.info/?page_id=247

人口も、また地理的にも東京よりはるかに小さなトロントでこれだけのファーマーズマーケットが開催されている。



実は、ファーマーズマーケットが増えているのはトロントだけではない。ニューヨークではマンハッタンの中だけでも、下記のリストによると29のファーマーズマーケットが開かれている。ユニオンスクウェアのファーマーズマーケットには私も住んでいたころに行ったことがあるが、その頃より数が増えているように思う。
http://manhattan.about.com/od/newyorkcityshopping/a/Farmers-Markets-In-New-York-City.htm

ファーマーズマーケットにいるベンダーは、当然ローカルな農家が中心なのだが、小規模なフードビジネスも多い。意外とベンダーになるのは難しいようだ。特に、ファーマーやベーカリーなどは競争が激しい。既存のベンダーと商品が似ていると断られるので,歴史の古い、大きなそして人気のあるマーケットではベンダー間の熾烈な競争が、入るために繰り広げられているようだ。また、しっかりしたファーマーズマーケットはより社会的に正統な方法(例えばローカルに生産された原料を使っている、など)で生産された食品であることなどが一定のパーセントで義務付けられているので、ベンダーはその要件も満たす必要がある。


そうやって選ばれたベンダーがいるマーケットのお客さんは当然、ローカルの食材を健康的に食べたい、という人が多い。(これはマーケットによってかなり差がある)そして、日本の健康食好きな人たちと比較して違うなー、と感じるのは「体によいものを食べたい」という欲求と合わせて「社会的に正統なものを食べたい」と思っている人が多いことだ。例えばオーガニックの良さについても、農薬の心配をしている、というよりはオーガニックの製法の社会的な正当性を言う人が多い(実際、先進国であればオーガニックでない野菜の農薬の残量は食べる人に問題はないことが多い)。GMO(遺伝子組み換え)についても同様だ。農業という産業全体に与える影響が嫌われる大きな理由になっている。


そしてこの「倫理的に正しい、社会的に正しい食べ物を食べる」という風潮は栽培方法や生産方法に限らない。数か月前から、某Food Co-op の購買委員会に参加しているのだが、そこで大きな話題になっていたのが、アメリカの企業であるEden-foodsが避妊薬をオバマケアでカバーすることを従業員に対して拒否した問題だ。宗教的な対立が大きなものとして背景にある。

http://www.businessweek.com/articles/2014-07-18/eden-foods-organic-pioneer-faces-boycotts-over-birth-control

Eden foods は北米のオーガニック市場の中で古く、大きな地位を占める企業なのだが、この事件により多大な社会的逆風に直面している。

The renewed legal push by Eden has prompted calls for a boycott of its products. An online petition has been signed by some 150,000 people amid vocal concern about carrying Eden products in some of the country’s most prominent food co-ops—which are, naturally, in Brooklyn, N.Y., Austin, Tex., and Madison, Wisc.
彼らのfacebook上では、「For your cookout this weekend, try corn on the cob with Umeboshi Plums, a salty, pickled plum.(週末のクッキングではトウモロコシと一緒にしょっぱい梅干にトライしてみて)」という焼トウモロコシの写真のついたポストに対して「That sounds like the perfect combination to have while you're trying to deny women their reproductive rights!(あなた達が女性の生殖に関する権利を否定しようとしてる間に食べるには、最高の組み合わせね!(投稿者はSarah Palinnのフェイクアカウント)」というような、皮肉を込めたコメントがいちいち大量に投下されており、なんだか可哀想な感じだ。ソーシャルメディアを運営している担当者は相当苦労していることだろう。てか、せっかくの梅干レシピなのに、梅干、全く興味をもってもらえず。。。今度トライしてみよう。

冒頭のFood co-opの購買委員会では「女性の人権を守らない会社」の商品は店頭に置かない、あるいは啓発も含めて商品の横にこのニュースを付記したうえで販売する、などの議論が行われている。


消費者全体からすると、Food co-opで食品を買う人たちは、マーケットのセグメントでは食に対して非常に「意識の高い」、あるいはいわゆる「フード左翼」的な人たちにあたるのだろう。ファーマーズマーケットはもっと多様性があるとは言え、同じような傾向は高い。



では、このトレンドはそういう「意識の高い」人たちのみのトレンドなのだろうか。従来はそうであったのだと思うのだが、もしかしたら北米における大きなトレンドチェンジが起きてるのかもしれないなー、と思わされるレポートが今月、発表された。ConsumerReports.Org のレポートである。今年のコンシューマーレポートではマクドナルドがファーストフードのハンバーガーチェーンの中で最下位にランクされたことが話題になっている。



このブログのテーマから言うともっと興味深いのは、1位になったHabit burgerだ。

http://www.habitburger.com/wp-content/uploads/Consumer_reports.pdf
彼らのウェブサイトを見てみると、

- Our hamburger is 100% fresh ground beef, char-grilled with a blend of special spices.
- Our chicken is fresh, hand filleted skinless breast that is marinated in our own special recipe, and then char-grilled.
- Our tri-tip steak is individually hand trimmed and marinated in teriyaki, and char-grilled.
- Our albacore is sushi grade, line-caught, and char-grilled with a teriyaki glaze and topped with our homemade tartar sauce.
- Our fresh produce is hand cut and prepared on site.
- Our buns and specialty breads are prepared at local bakeries and delivered fresh 5 days a week.
- Our salads are made fresh and hand tossed to order.



という具合でかなりのローカル押しである。特にバンズの部分はローカルのベーカリーが週に5度届けに来てる、というからすごい。調理についてもセントラルキッチン使ってませんよ、お店でスクラッチから作ってますよ、というアピールになっている。

マクドナルドと比べると、かなり企業規模に違いがあるのだけれど、マクドナルドの業績が今年に入ってから前年割れが続いているのもあり、安かろう悪かろうのファーストフード業界の顧客の中で大きな変化が起きているのかもしれないと思わされる。


よりローカルな食材を、手間暇かけて、倫理的に正しく食べる、という流れをけん引しているファーマーズマーケットは今後も同行を注視していきたい。


また、ファーマーズマーケットはフードビジネスでリーンスタートアップをする、という観点からみてもすごく面白いのだけれど、それはまた次回に。

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